仕事で書いたメモ帳の裏

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"10 ways of to have a better conversation"が良かった件

最近、英語の勉強を再開したところ、担当の英会話講師が「TEDを見て、それについて意見交換しよう」と言ってきた。

この英会話学校はオンラインプログラムなので、常にPCを使って教師と会話することになるから、退屈なテキストよりこういう方法のほうがよいのかもしれない。

で、2つ目以降は「お前が選べ」と言われたうえで、最初の教材として勧められたのがこれ。

www.ted.com

 

再生回数は250万回、平均がどこだか分からないが結構多いといっていいだろう。

お題は"10 ways to have a better conversation"。和訳すると、「上手く会話する10の方法」か。

最初、このタイトルを見たとき、正直ちょっと気分が萎えた。ネットの中には、「お金が貯まる4つの方法」とか「彼氏ができる3つのコツ」とか、こういう「これさえやれば」みたいな記事がたくさんあるが、正確に数えたことはないが体感的には9割以上が毒にも薬にもならない内容であることがその理由だ。

ちょっと脱線してなんで無意味だと思うかを書くと、内容の多くが抽象的で当たり障りのない一般論ばっかりなことが多いというのが1つ。教条的なことを言われても、ほとんどの人はそれが大事だと知っている。問題は、大事だとなんとなく分かっていても行動できないところにあるのだから、「いますぐ実行するためのポイント」とか「”なんとなく分かっていた”という状態を"本当に大事だと分かった"に変える重要性についての明確な情報」がないといけないのではないだろうか。そうじゃないと行動に結びつかないからだ。もう1つは、網羅感が感じられず「なんでその3つとか4つだけなの?」となってしまうこと。こうなると、内容に説得力がなくなり書いてあることが重要に思えなくなってしまい、結局これも行動に結びつかない。

 

話がそれた。が、このスピーチはよかった。何故そう思ったかを少し書いてみる。

 

まず、冒頭にちゃんと現代人が会話能力を磨く必要性が説かれている。彼女は、

「いま、議論が多く起きている。しかも、みんなバランスを失っていて、お互いの主張を聞かず攻撃的になっている。」(かなり意訳)

と主張する。なんとなくこれは納得感がある。攻撃的でお互いがお互いの主張に耳を傾けない議論は日本でも多い。原発、TPP、消費税、集団的自衛権などなど。僕はそれぞれのトピックに意見があるけど、それよりも賛成派と反対派の会話が全然なりたっていないことにずっと違和感を感じてきた。

どれも難しい議論で、賛成案にも反対案にもメリットとデメリットが存在する。なのに、議論の多くは総論賛成か総論反対かになりがちで、理由付けも「反対するやつは国賊」とか「アベ死ね」とか論拠じゃないメッセージばかり。論点に分解して、

  • 「この論点だと案Aが良いけど、次の論点だと案Bのほうがいいよね」

とか

  • 「ここは意見が一致するけど、こっちは意見が一致しないね。何故だろう。」

とか生産的な議論が起きる感じはまったくしてこない。どちらもお互いの意見に耳を傾けていない、というのはその通りだと思える。

 

次に、10の方法がどれも小手先ではなく、本質的だと思えることだ。彼女は会話能力の必要性を説いたあとにまずこう言う。

「相手の目を見ろとか、頻繁に頷けとか、言われたことを繰り返せとか、そういうのは忘れていい。全部ゴミだ。あなたが本当に会話に集中していたら、それは何もせずとも通じる。」(かなり意訳)

概ねその通りに思える。笑顔で頻繁に頷く人に胡散臭さを感じることは時折ある。変にこっちの主張をサマリーされて会話の流れが淀むことも時折ある。もちろん、それらが有効だと思えた時もあるから、テクニックだけ覚えても使いドコロが分からなければなんにもならないのだ。

じゃあ、その使いドコロはどうやったら分かるのか、それは結局文脈次第だから「会話に集中すれば自ずと分かる」ものなのだろう。自ずと分からずとも少なくとも大前提ではある。だとしたときに「集中する」とはなんなのか。彼女はこの後に、10の方法で単に根性論に留まらない集中して会話する方法を伝えてくれるのだが、そのどれもが説得力がある。僕がサマリーするとチープになりそうなので、具体的にはビデオを見て欲しいのだが、さすがはプロのインタビュアーだなと思った。

 

そして、3つ目はユーモアがあることだ。ところどころに笑えるポイントがあって、飽きない。特に最後に登場する彼女の姉妹の言葉は名言だ、大笑いしてしまった。もっとも英文を読むのが遅いので、観客と笑うタイミングが大きくずれてしまったが。

 

このビデオを見て、思い出した光景がある。それは、新卒の就職の文脈で「企業は学生にコミュニケーション能力を求めている」という話に対して学生が「結局、勉強とかよりサークルでコミュ能力を磨いていたヤツがいいのかなあ」と言うシチュエーションだ。

この学生は「コミュ能力」を単に「おしゃべり能力」だと捉えていたように感じた。実のところ、コミュニケーションはおしゃべりではあるのだが、単に会話が成立すればいいという話なのだろうか。企業が求めているのはそれだろうか。もっと意見を鋭く磨いたり進化させたりする会話能力なのではないだろうか。そして、この学生は「コミュ能力とは具体的にどういうものですか?」と質問する発想を持てるだろうか。

このTEDビデオをみてこんなことを思った。興味を持ったら見てみたらどうだろうか、10分ほどである。日本語の字幕を付けることもできる。